期間工物語

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期間工物語 第十九話

中原さんが株で病み始めたのをきっかけに、いつもは彼が率先して引き受けてくれていた残業が最年少の悲しさ、僕へと回ってくる羽目になった。株で相当やられていたようだし、とても残業で小銭を稼ぐ気分ではなくなっていたのだろう、仕方が無い。  (という...
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期間工物語 第十六話

慣れてしまうとあれだけ大変だった、不可能にも思えた工程がさほど苦ではなくなってくる。人類の限界を計算しつくしたギリギリの作業だと思っていたが、次第に他人を助ける余裕まで出てくるのだから我ながら驚くばかり。 当然そんな状況では疲れ方も前に比べ...
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期間工物語 第十五話

結論から言えば僕はその後、その雀荘には一度も行っていない。 特にボロ負けしたわけではなく、その日も500円負けというレートを考えれば場代分でちょいと足が出ただけのほぼほぼ勝利と言ってもいい内容だった。 が、やはり危惧していたとおり仲間内の麻...
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期間工物語 第十四話

さりとて数万円程度では日常はそう変わるべくもなく、それでも日々の食費にすら窮していた男がその心配をしなくて済む様になったのは大きかった。次の休日に何をしようか、それを考えるだけで高揚した。 選択肢が増えることで、これまでとは視界さえも変わっ...
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期間工物語 第十三話

来る日も来る日もラインを回し回され、やがてそれが日常となり何も考えなくなってきた頃、一月と六日が過ぎた十一月二十五日。ついにその時が訪れた。心無しか朝からみんなの顔がウキウキしている。僕もわけもなく踊り出したいぐらい身体の裡で喜びが暴れてい...
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期間工物語 第十二話

キンコーンカーンコンッ・・・ラインの停止と共にエーデルワイスのテーマが工場内に木霊する。これを選んだやつはセンスがいいなと思いながら、45分の待ちわびた昼休憩。我先にと食堂へと急ぐ。 HONDAの飯は美味い。たったの300円前後でお腹一杯お...
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期間工物語 第十一話

一ヶ月もすればもうベテランだ。 その頃になると僕は既に余裕を持って作業を進めることが出来るようになっていたし、さすがにベテランは言いすぎかもしれないが、少なくとも周りに迷惑をかける事はなくなっていた。立派な戦力と言えただろう。 そうしてこの...
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期間工物語 第十話

怒号。 それが自分に向けられているものだとしばらく気付けなかった。休日の十時ちょっと、静寂さだけが売りのホテルにおよそ似つかわしくない光景に脳が着いていかなかったのだ。ましてやそれが自分に向けられているなど… 洗濯物のチェックのために踊り場...
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期間工物語 第九話

宿泊先へと宛がわれたビジネスホテルは三階建てだが、実はここには宿泊者しか気付かない3.5階とも呼べるフロアがある。それは屋上へと続く踊り場なのだがひっそりと洗濯機と乾燥機が置かれていた。 言わずもがな、期間工のための簡易コインランドリーなの...
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期間工物語 第八話

人間の適応力とはかくも恐ろしきものなのか、あれだけ絶望的に思えた工程も一週間もしないうちに何とかこなすことが出来るようになるのだから自分自身ただただ驚くばかりである。 一応限界を考えて割り振られた作業工程ではあるのだろうが、だとすればどれだ...