期間工物語

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期間工物語 第九話

宿泊先へと宛がわれたビジネスホテルは三階建てだが、実はここには宿泊者しか気付かない3.5階とも呼べるフロアがある。それは屋上へと続く踊り場なのだがひっそりと洗濯機と乾燥機が置かれていた。 言わずもがな、期間工のための簡易コインランドリーなの...
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期間工物語 第八話

人間の適応力とはかくも恐ろしきものなのか、あれだけ絶望的に思えた工程も一週間もしないうちに何とかこなすことが出来るようになるのだから自分自身ただただ驚くばかりである。 一応限界を考えて割り振られた作業工程ではあるのだろうが、だとすればどれだ...
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期間工物語 第七話

その頃金の無かった僕は、しかし希望に満ち溢れていた。早番が6:30~15:15まで、遅番は15:05~23:30という二交代制の職場だったため思った以上に時間に余裕が出来る。ましてや独り身、誰憚ること無きビジネスホテル暮らし。 初めこそ疲れ...
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期間工物語 第六話

(痛ッ…!?) 5時55分、烏龍茶のペットボトルの蓋を開けようとしたとき、痛みで一気に目が覚めた。 右手の指が開かない。 第一関節、第二関節ともに何かを握ったような形のまま丸まっていて、それはあたかも昔見た野口英雄物語の漫画の一シーン、幼き...
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期間工物語 第五話

僕らが配属されたのはS481-二輪組立てモジュールと呼ばれる部署で、その名の通り二輪車、つまりバイクの組立てをする場所である。一般的にライン作業というとベルトコンベアーに乗って流れてきた部品をレーンの脇に立っていそいそと加工するものと想像し...
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期間工物語 第四話

「おーい、戸邊くん?野呂やけど」 ドンドンドン。ドアを乱暴に叩く音が聞こえる。見なくても声の主はわかっていた、名乗ったとおりの野呂さんだろう。 「お~、こっちもなかなかご立派なお部屋やな。なんや、想像以上やったなココは」 笑いながら、野呂さ...
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期間工物語 第三話

いっそう、より一層風が冷たく感じるような、そんな寂しい町である。通行量こそ多いが誰も立ち止まらない、通過点のような町。近くに自衛隊の基地があるせいか常時飛行機の離着陸時の凄まじい轟音が辺りに響いていた。 基地からそう離れていない、大通りに面...
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期間工物語 第二話

「一緒に期間工行かねーか?」 誘ったのは僕である。ちょうどその頃、一緒に燻っていた友人の伊佐美にも声を掛けていた。自分は専門学校を中退していたが、伊佐美は高校を中退している。この伊佐美とはガキの時分からの付き合いで、良くない遊びは大体こいつ...
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期間工物語 第一話

マグロ漁と、迷っていた。 てっとり早く金を稼ぐにはどうすればいいか、そう考えたとき候補に挙がったのが自動車メーカーの期間工と遠洋マグロ漁の二択であった。他にリゾートバイトなる案もあるにはあったが、時期が悪く今は募集が無いらしい。……いや待て...
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期間工物語について

手始めに、このサイト(ブログと呼ぶべきか?)の趣旨について説明しておきたい。 このサイトの主な目的は連続インターネッツ小説「期間工物語」を掲載する事である。これを書いてる私ことumiwoは、その昔「侍魂」をはじめとするテキストサイトが流行り...